2025年に学ぶ日本の放棄された家の取得方法と相続登記のポイント

日本では2024年4月1日から「相続登記」が義務化され、相続によって取得した不動産の名義変更手続きは3年以内に完了しなければならなくなりました。この法改正は、長年社会問題となっている所有者不明土地や空き家問題の解消を目的としています。したがって、放棄された家を取得するためには、まず相続登記の適正な手続きを理解し、相続人が誰であるかを確定し、名義変更を行うことが不可欠です。

2025年に学ぶ日本の放棄された家の取得方法と相続登記のポイント

放置された家屋を取得して利活用するには、現況確認と所有者調査、適切な取得手段の選択、そして名義を確定させる登記手続きが欠かせません。特に、2024年の不動産登記法改正で相続登記が原則義務化されたため、期限や必要書類の理解が遅れると、売買・賃貸・解体・融資など次のアクションに進めなくなるリスクがあります。2025年の運用状況を踏まえ、取得から相続登記までを段階的に整理します。

放棄された家を取得するために知っておくべき相続登記の義務化

相続により不動産を取得した場合、相続登記(所有権の移転登記)は原則として義務化されています。相続開始および自己が相続人であることを知った日から3年以内に申請するのが基本で、正当な理由なく怠ると過料の対象となる可能性があります。暫定対応として「相続人申告登記」を利用すれば、必要書類を整える間に義務を履行した扱いにできます。なお、相続登記を終えていないと、売却や解体の契約ができない、空き家対策の補助申請が進まないといった実務上の支障が生じます。

放棄された家を取得する際の具体的な手続きの流れ

  • 現地・法的調査:危険箇所の有無、インフラ、建物の滅失対象性、用途地域、固定資産税の滞納有無などを確認します。法務局の登記情報で所有者と権利関係(抵当権・差押え)をチェックします。
  • 取得経路の選択:売買、贈与、相続(相続人である場合)、自治体の空き家バンクや地域の仲介事業を活用します。所有者不明・連絡困難な場合は、自治体の空き家対策窓口や専門家に相談し、相続財産管理人選任等の法的手続きを検討します。
  • 契約・同意形成:売買・贈与なら契約締結、相続なら相続人全員で遺産分割協議を行い、合意内容を文書化します。
  • 相続登記の準備と申請:評価証明や戸籍一式を収集し、法務局に申請します。建物が実体を失っている場合は滅失登記の要否も確認します。
  • 取得後の実務:危険空家に該当しないよう保全・修繕、用途変更、解体、賃貸・売却の検討、地域の助成制度の活用などを進めます。

相続登記申請に必要な主な書類

  • 登記申請書(相続による所有権移転)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍一式
  • 相続人全員の現在戸籍および住民票(住民票の除票を含む場合あり)
  • 固定資産評価証明書(最新年度、土地・建物)
  • 相続関係説明図(任意だが添付で原本還付がスムーズ)
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印押印)と印鑑登録証明書
  • 代理申請の場合の委任状(司法書士等)
  • 必要に応じて、遺言書(公正証書遺言 or 検認済み自筆証書遺言)、建物滅失登記関係書類、住居表示変更の証明 など

書類名や様式は共通点が多い一方、家族構成や相続履歴により必要範囲が変わります。例えば代襲相続がある、再婚で子が複数系統に分かれる、戸籍の本籍地が転々としている、といったケースでは収集先が増えます。収集の順番を整理し、原則として「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍をそろえる」ことを意識すると取りこぼしを避けやすくなります。

相続登記にかかる費用の目安

相続による名義変更は不動産取得税が非課税ですが、登録免許税や各種証明書の発行手数料、専門家への依頼費用(任意)が発生します。金額は物件数や評価額、家族構成、書類の取り寄せ数によって変わります。以下は実務で想定される主な費用項目の概算です。


Product/Service Provider Cost Estimation
登録免許税(相続の所有権移転) 法務局 固定資産評価額の0.4%
登記事項証明書(不動産) 法務局 600円/通(窓口交付)
地図・公図の写し 法務局 450〜500円/通
固定資産評価証明書 市区町村 300〜400円/通
戸籍謄本 市区町村 450円/通
除籍・改製原戸籍 市区町村 750円/通
住民票・除票 市区町村 300〜400円/通
司法書士報酬(申請代行) 司法書士事務所 5万〜15万円+物件加算(目安)
公証人手数料(任意:協議書公正証書化) 公証役場 財産額に応じて約1万〜数万円
郵送・交通費・印紙等の実費 各機関 数百〜数千円

本記事に記載の価格、料金、費用見積もりは、利用可能な最新情報に基づく概算であり、今後変更される可能性があります。金銭判断の前に必ず各自で最新情報を確認してください。

共有名義や複雑なケースでの注意点

  • 共有名義の整理:過去の相続が未了で共有者が増えていると、全員の同意取得に時間を要します。連絡先が不明な相続人がいる場合は、不在者財産管理人や相続財産管理人の選任など裁判所手続が必要になることがあります。
  • 住所・氏名不一致の解消:登記上の住所と現住所が違う場合、住民票の履歴や戸籍の附票で連続性を証明します。改姓・改名や本籍変更も早めに確認します。
  • 建物の現況:倒壊等で実体がない建物は、先に建物滅失登記が必要となる場合があります。解体・再建の可否は用途地域や建築規制を確認します。
  • 抵当・差押え:金融機関の抵当権や公的差押えがある場合は、抹消条件(弁済・合意)や時効・法的整理の要否を個別に検討します。
  • 行政制度の活用:地域の空き家バンク、空き家対策補助、相続土地国庫帰属制度(一定要件で土地の国庫帰属を申請可能)など、公的制度の適用可否を確認します。申請には現地調査や負担金が伴う場合があります。

結論として、放棄された家(空き家)の取得は、所有者・権利関係の把握と相続登記の計画的な実施が成否を分けます。義務化により登記を先送りにするメリットは小さく、早期に書類収集と手続きを進めるほど、その後の利活用や安全管理、売却・賃貸等の選択肢を確保しやすくなります。